【開かれた階段と、くたびれたサンダル】

Vol.09 サトコとツヨシ２ 　サトコが、ツヨシの布団にもぐり込んできた。 「せめーよ」 「だって、寒いよ」 　しょうがなく、ツヨシは半分横にずれた。 　ツヨシの肩に頭を乗っけて、サトコはツヨシの腹の上に右手をのせる。 「おもてーよ」 「置くとこないの」 　サトコはツヨシの下腹部へ右手を移動した。それから、ペニスを握ったりプルプル動かしたりし始めた。 「眠れないって」 「だって、面白いもん。あ、かたくなってきた」 「……」 「なぁ」 「なに？」 「人間が緑色に見えたことないか？」 「緑色って、どんな？」 「なんていうか、スタジアムジャンパーみたいに少し光沢のある、青みがかった緑色で、顔から服から全部ボーっと弱く光ってるみたいな」 「ないよ、そんなの」 「看護婦だろ？」 「看護婦と緑色の人と、何の関係があるの」 「緑になっちゃうと、その人死んじゃうんだ」 「えー、なんで？」 「たぶん、俺だけがそう見えるのかな」 「わかんないよ、そんなこと」 　ツヨシは、ある日鏡に映った自分が緑色になっているところを想像して、なんだか悲しくなってきた。 　それから、急に子供が欲しくなってサトコのパジャマを剥ぎ取り、上になって挿入した。ニワトリみたいに忙しく動いて、ツヨシはすぐに果てた。 　登り始めたジェットコースターが途中で引き返してしまったみたいに、サトコは呆然としていた。 　ペニスについた液体をティッシュで拭き取ったら、血がついていた。 　ああ、子供になる前に、卵は排泄されていたんだな、とツヨシは思った。