【開かれた階段と、くたびれたサンダル】

Vol.04 インスタントラーメンとカエル 　あり得ない、いや、あってはならないことだ。インスタントラーメンのパッ ケージの中にカエルが入り込んでいただなんて。 　インスタントラーメンを作りながら、女房が数年前の報道を思い出して私に 語ってくれた。 「アマガエルって保護色でしょ。麺と同じ色になっちゃってて、最初わかんな かったんだって。それが突然動き出したんでビックリしたって、インタビュー で言ってた」 　いったいどれくらいの確率なんだろう。オートメーション化された工場の中 へアマガエルが入り込み、しかもパッケージされるラーメンと一緒に袋の中へ まぎれ込み、そのまま生きているだなんて。しかし、実際にあったことなんだ から仕方がない。 　それにしてもそんな偶然がどうやって起こったのか、知りたい。当時の報道 を見ていた女房なら何か手がかりを知っているかもしれない。私は女房に聞い てみた。 「そのカエルって、いったいどうやって袋の中に入り込んだんだろうね」 　女房は、菜箸で鍋の中をかき混ぜながら 「そうねぇ、やっぱり、ピョン！　って入ったんじゃない？」 　と言ってのけた。 「ぴょ……」 　そうか、“ピョン！”か。なにしろカエルだもんな。